子どもが自動車免許をとった!自動車保険はどう変える?

この間入学式を終えたと思っていた子どもが、あれよあれよと慌ただしくしているうちに学校生活は過ぎ、高校を卒業したと思えば18歳成人となり車の運転免許をとる年になった、と今年免許をとった子どもさんをお持ちの方は思っているかもしれませんね。(小学校入学からは12年、中学入学からは6年、高校入学からはたったの3年。今年入学式を迎えられた方もいつか来る道、あっという間です)

子どもが運転免許をとると「車をどうしようか、駐車場は?」という前に出てくる問題として「親の車を運転していいの?」いうことがあります。

車の保険(任意保険、以下車の保険とは任意保険のことを指します)は運転者範囲の限定・運転者の年齢の限定・免許の色・車の使用目的などにより補償範囲・保険料が細分化されているからです。
親の車を子どもが運転して事故を起し、保険で補償されず、加害者も被害者もえらいことになったという事例は稀とはいわずあります。
子どもが運転免許をとり、親の車を運転するときにとるべき手続きについて解説しましょう。

運転者の範囲はこのように表されます。
※保険会社によって運転者の範囲・運転者年齢条件が違います。ご確認ください。

運転年齢条件を満たした場合に〇・運転者年齢条件にかかわらず〇
と分かれています。運転者限定と年齢条件についてみていきましょう。

記名被保険者
その車を主に運転する人です。(所有者と違うこともあります)

本人限定
記名被保険者が運転するときだけ保険の対象になります。

本人・配偶者限定
ご夫婦が運転するときにだけ保険の対象になります。

子どもが運転するようになったら、まずは運転者限定を見直してください。
今まで運転免許をもっているのはご夫婦だけで、家族以外の人は運転しないからと本人・配偶者限定になっていませんか?これを限定なしに変更しましょう。

次に、運転者年令条件を見直します。運転者年令条件が適用されるのは同居の親族です。
新しく免許をとった子が家に住み同居の親族になる場合、運転者年齢条件が適用されるので、その子の年齢に合わせた年齢条件に変更しましょう。

記名被保険者から見た家族の範囲のイメージ

年齢条件には、「年令を問わず補償」「21才以上補償」「26才以上補償」「35才以上補償」があり、年令を問わず補償は保険料は一番高く、21才以上、26才以上、35才以上と運転する人のうち最も若い人の年令が大きくなるにつれ保険料が安くなります。
今までご夫婦のみが運転しているので「35才以上補償」になっているかもしれません。
運転する子どもさんの年齢に合わせましょう。(18才で免許をとった同居のお子さんが運転されるのでしたら「年齢を問わず補償」になります。)
※保険会社により運転者年齢条件は異なります

では、自動車保険における同居の親族とは何でしょう?
一般的には「同一家屋に居住している状態」をいいます。
「二世帯住宅」・「同一敷地内に2つの住宅がある」場合は注意です。

同居とは、「生活に必要なものを共有していて行き来できる場合」をいいます。

「二世帯住宅」・「同一敷地内に2つの住宅がある」場合 

二世帯住宅が「キッチン・玄関などが別で建物の内部で完全に仕切られている場合」は別居になります。

同一敷地内に2つの住宅がある場合、「キッチン・トイレなどがついていないはなれの場合」は同居とみなされますが、「両方の住宅に生活に必要なキッチン・トイレなどが備わっている場合」では別居とみなされることもあります。
生計が一緒である、扶養している、住民票が一緒であるなどは同居の条件ではないのでご注意ください。
※保険会社によって見解が分かれるものもあるのでご確認をお願いします。

別居の未婚の子の場合は年齢条件に関係なく補償されます。
運転免許をとって進学や就職で別居している場合は運転者年齢条件の見直しは必要ありません。

では、「別居の未婚の子」の条件は何でしょう?
未婚の子は婚姻歴がないこと。離婚後の子は別居の未婚の子にはなりません。
別居は「別に居住していること」になります。例えば別の住居で水道光熱費を払っているとか。
実際にあった例として、子どもが長期家出をして友人宅を渡り歩いているときに親の車を運転して事故を起こし「別居ではなく同居」とみなされて年齢条件が35才以上だったため補償の対象外になった事もあります。

記名被保険者から見た家族の範囲のイメージ

運転者の範囲限定・運転者年齢限定は自動車保険の保険料を下げるのに有効ですが、運転する人が増えるときには気を付けましょう。

一郎さん家族の変化を例にしましょう。

一郎父が所有する車を一郎・一郎妻のみが運転していました。(一郎父・一郎母は運転しません)
一郎が記名被保険者
「本人・配偶者限定」「35才以上補償」で保険契約をしていました。

一郎長男二郎の妻子と同居することになりました。お互いの車を乗ることもあります。
本人・配偶者限定
→ 運転者限定なし に変更
35才以上補償
→ 一番若い二郎妻の年齢に合わせて21才以上補償に変更
その後、一郎長女(20才)・一郎次女(18才)が運転免許をとったが、別居の未婚の子なので条件の変更はなし。

来年、二郎妻が26才になると 21才以上補償 → 26才以上補償 にできるので、保険料を安くすることができます。(自動的に安くなるのではないので、年齢条件を変更することを保険会社に連絡しましょう)

運転者限定は自分の車を運転するときだけでなく、思わぬところで影響が出てくる時があります。
それが他車運転特約・臨時代替自動車特約です。
※保険会社によっては他車運転特約に臨時代替自動車特約を含む場合もあります

一郎さんの場合、家族の車と別に一郎さんだけが運転する趣味のスポーツカーを持っています。本人限定・35才以上限定です。普段は一郎さんしか運転しないので問題ないのですが、この車が事故にあいました。修理には時間がかかるということで修理工場が代車を貸してくれました。代車はファミリーカーなので、一郎さん家族がみんなで利用したいです。修理工場からは代車の保険は「他車運転特約」もしくは「臨時代替自動車特約」で運転してほしい、といわれました。

他車運転特約は自動車保険に自動セットされている特約で、「記名被保険者またはそのご家族の方が、他人の自動車を臨時に借用して運転しているときに起こした事故について、他人の自動車をご契約のお車とみなして、ご契約のお車の契約条件に従い、保険金(対人賠償・対物賠償・人身傷害・自損傷害・無保険車傷害・車両)をお支払いします、というものです(保険会社パンフレットより抜粋)これには(注)として、【(注)運転者限定・運転者年令条件を設定した場合は、限定した運転者の範囲と異なる方や運転者年令条件を満たさない方が運転中の事故については、原則として保険金をお支払いできません。】とあります。

代車を家族みんなが利用するためには 本人限定・35才以上補償 → 限定なし・21才以上補償 に変更しなければなりません。
これは車の修理の場面だけでなく、別居の未婚の子が友人の車を一時的に借りて運転する場合にも適用されます。(例えば一郎さんの場合、別居している一郎長女、一郎次女が友人の車を一時的に運転する場合は、 本人・配偶者限定 → 限定なし にすると他車運転特約の対象になります)
※他車運転特約の補償内容は保険会社によって違い、対人・対物保障のみで人身傷害・車両保険などが対象外の場合もあるのでご確認ください

更新時期が来ると「前と一緒で」と更新してしまいがちな自動車保険ですが、いろいろな限定をつけることで保険料を抑えている場合もあります。

運転者が増えるとき・変わるとき・家族の移動があるときは手続きを怠らないようにしましょう。


この記事の執筆者:三島 佳予子(Kayoko Mishima)


保有資格:CFP・1級ファイナンシャル・プランニング技能士 / 住宅ローンアドバイザー /宅地建物取引士