地震保険について

2024年(令和6年)1月1日、まさかの地震の知らせに驚きました。
被災をされた皆様にお見舞い申し上げるとともに、今も尽力されている皆様を陰ながら応援させていただきます。
地震に備えるものとして地震保険があります。
地震保険とはどういったものか、あたらめて内容を見ていきましょう。
地震保険の歴史
昨年、2023年は関東大震災から100年の節目でした。
日本は地震大国です。
関東大震災が起こった100年前から地震保険の構想はありましたが、地震保険創設のきっかけになったのは1964年6月の新潟地震でした。これに深く関わったのは後に総理大臣となる田中角栄氏だったといわれています。

ソニー損害保険株式会社「地震と地震保険の100年を振り返る歴史年表」より
https://www.sonysonpo.co.jp/fire/
創設時は火災保険に加入すれば自動的に地震保険にも加入するというもの(自動付帯)でしたが、保険金額の割合も30%と低く、限度額も十分ではありませんでした。
その後、何回か改定が行われ、火災保険への原則自動付帯(原則加入だが地震保険に加入する、しないは契約者が決める)になり、限度額も大きくなりました。

地震保険の歴史早わかり-WEB防災情報新聞より
https://www.bosaijoho.net/2023/03/16/earthquake-insurance/
地震保険の特徴
地震による被害は極めて広範囲、かつ、大きなものになります。
地震保険は公的性格が強く、次のような特徴があります。
《注意 地震による火災、津波による水災は火災保険では補償されず、地震保険で補償されるようになります≫
【目的】
生活の再建(迅速な保険金支払いを目指します)
【加入方法目的】
火災保険と同じ保険会社を窓口として加入します。
どこの保険会社で加入しても補償内容・保険料は同じです。
地震保険のみの加入はできません。
【補償対象】
生活に必要な建物・家財のみ。
専用店舗・事務所・通貨・宝飾品などは対象になりません。
【保険金額】
火災保険の保険金額の30%~50%の範囲。
建物5000万円、家財1000万円を限度とします。
【補償内容】
保険金は、実際の修理費ではなく、損害の程度(全損、大半損、小半損または 一部損)に応じて地震保険のご契約金額の一定割合(100%、60%、30%または 5 %)をお支払いします。

日本損害保険協会 地震保険のしおり(2022年10月版)より抜粋
損害の認定基準
どれくらいの損害でどれくらいの保険金がもらえるのか、気になるところです。損害の認定は、「日本損害保険協会 地震保険損害認定基準」に沿ったものになっています。(国が定める「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」とは異なります。)
1.建物の「全損」「大半損」「小半損」「一部損」

※1:地震保険でいう「主要構造部」とは、建築基準法施行令第1条第3号に掲げる構造耐力上主要な部分をいい、損害調査においては、建物の機能を確保する部位で、損害が外観上発生することが多い箇所を着目点としています。
※地震を原因とする地すべりその他の災害による現実かつ急迫した危険が生じたため、建物全体が居住不能(一時的な場合を除きます。)となったときは、全損とみなします。
2.家財の「全損」「大半損」「小半損」「一部損」

【家財の損害程度の認定方法】
個々の家財の損傷状況によらず、家財を大きく5つ(①食器類②電気器具類③家具類④身回品その他⑤寝具・衣類)に分類し、その中で一般的に所有されていると考えられる品目の損傷状況から、家財全体の損害割合を算出し、全損・大半損・小半損・一部損の認定を行います。
建物については、沈下量・外壁のひび・建具の開閉状況などにより算定されます。また、地震を原因とする地盤液状化には別の認定基準が用いられます。

※「地震等」を原因とする地盤液状化以外による損害には適用されません。
※「地震等」を原因とする地盤液状化による損害については、傾斜・最大沈下量のいずれか高い方の「損害の程度」を採用します。
※ 主要構造部に大きな損傷が生じている場合には、「1.(1)建物部位の損害程度に着目した損害の認定基準」での損害認識も行い、「損害の程度」の高い方を採用します。なお、両基準の調査結果を合算した認定行いません。
日本損害保険協会 地震保険のしおり(2022年10月版)
https://www.sonpo.or.jp/insurance/jishin/ctuevu00000001fo-att/jishin_siori_2022.pdf
日本損害保険協会 地震保険損害認定基準
https://www.sonpo.or.jp/insurance/jishin/ctuevu00000001fo-att/nintei_kijyun.pdf
地震保険の保険料
地震保険の保険料はお住いの地域と建物の構造によって異なります。
地震が起こる確率が高い地域、耐震性が低い建物の保険料率は高くなっています。
地震保険の保険料が高くて、地震保険に加入をためらる方もおられるでしょう。
地震保険の保険料が高いのは、地震になる確率が高い、地震にあうと被害が大きくなるだろうことを示しているので、今一度地震保険についてご考慮願いたいものです。

日本の地震保険 損保料率算出機構 2022年10月版より

日本の地震保険 損保料率算出機構 2022年10月版より
日本の地震保険 2022年10月版 損保料率算出機構
https://www.giroj.or.jp/publication/j_earthquake/j_earthquake_all.pdf#vie
地震の被害と今後想定される大規模地震
損保料率算定機構の「日本の地震保険(2022年10月版)」より地震被害予想のイメージを抜粋します。
日本は海側のプレートと陸側のプレートがぶつかる位置にあり、地震がとても多い地域です。プレートのぶつかりによる海溝型型地震のほかにも、活断層などで起こる直下型地震もあります。
地震による被害は、揺れによる建物の倒壊のほかに、地盤の液状化による傾き、地震による火災、津波、など様々なものが想定されます。
(地震による火災は消火活動が滞るため大きな被害になりやすいです)

内閣府の防災情報のページより
※発生予測確率は、地震調査研究推進本部による(平成29年(2017年)1月時点
https://www.bousai.go.jp/kyoiku/hokenkyousai/jishin.html
損害保険会社の取り組み
地震保険は国が管轄する保険で、どの保険会社で加入しても同じ補償、同じ保険料になります。
損害保険各社では、この地震保険に加えて独自の補償を上乗せしているところもあります。
火災保険の保険金額まで100%補償する(ソニー損保・東京海上日動・損保ジャパン)
類焼により大災害になりやすい地震による火災の被害を保険金額まで100%保障する(三井住友海上・あいおいニッセイ同和損保)
それぞれに特約保険料は安くない金額ですので、どこまで補償を求めるか、ご検討が必要でしょう。
また、建物だけでなく、家財に地震保険をつけて生活再建に役立てる方法もあります。
補償が途切れないように
火災保険・地震保険には満期があります。
いざ災害が起こった時に「補償がきれていた」では悲しいです。
保険の満期には気を付けましょう。
一例ですが、12月31日午後2時に「午後4時に保険が満期ですがどうしたらいいでしょう」という相談を受けたことがあります。無事に更新できてホッとしましたが、年末年始、連休、お盆など災害はいつ起こるかわかりません。
補償は途切れないようにしましょう。
日本は地震大国です。
地震保険ができたのには理由があります。
地震の被害が補償されるのは地震保険だけです。
今一度、ご自身の補償の見直しをしましょう。
この記事の執筆者:三島 佳予子(Kayoko Mishima)
保有資格:CFP・1級ファイナンシャル・プランニング技能士 / 住宅ローンアドバイザー /宅地建物取
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