親と、そして子と進める相続 まずは話をしよう!

「相続」というと
「死んだときのことを考えるなんてえんぎでもねぇ」とか
「遺産を当てにしているようで話題にのせにくい」とか
なかなか話がきりだせないことがあります。

でも、「相続」はお金のことだけではありません。
親と、そして子と一緒に進めておいた方が助かる部分があります。

相続が始まると、被相続人(亡くなった方)が生まれてからお亡くなりになるまでの戸籍謄本が必要になります。
生まれてから一度も転居したことがなく、戸籍が動いたことがない方は簡単に済むでしょう。
けれど、転居があったり、結婚・離婚があったりして戸籍の住所地が変わっていたり、戸籍の出入りがあったりすると、それをすべてたどらなければなりません。
まして、親が子どものときの転居などは親の親(祖父・祖母)が手続しています。親が幼いころの転居なんて親でさえも記憶が定かでないことがあります。

実際に必要な戸籍は死亡時からとることになりますがそれに備えて
「おやじ、相続に備えて戸籍をとるよ。隠し子がおったりせんか?」
なんていうと相続前に険悪になります。
誰にだって言いなくないことに一つや二つありますし、円満相続は円満な人間関係の先にあります。
「おやじは小さいころどこに住んどったんかなぁ」
とか、思い出話を聞くと「ここに戸籍をとりにいくのか」と心の準備ができますね。

法定相続情報証明制度、本籍地以外の市区町村での戸籍謄本の発行など、新しい制度も実行されるようになってきています。
制度は変化していくので、大まかに必要なものを気に留めるようにしておきましょう。

本籍地が遠隔にある方でも、
お住まいの市区町村や勤務先の最寄りの市区町村の役場の窓口において、戸籍謄本を取得することができるようになります。(新戸籍法第120条の2)
ご自分の戸籍のほか、配偶者、父母、祖父母、子の戸籍の謄本も取得が可能です。
新たな制度の運用は、令和5年度中の開始を予定しています。

戸籍法が改正されてできるようになること 法務省民事局

https://www.moj.go.jp/content/001295591.pdf

いざお亡くなりになると、親族をはじめ色々な方へ連絡が必要です。
自身は高校を卒業してから地元の縁が薄れてしまった方もいるでしょう。
お中元、お歳暮なども縮小される傾向にあり、親族との付き合いも薄くなってきたところもあるでしょう。
「親が元気なうちは付き合いは親任せ」なところもありますよね。

聞きにくいかもしれませんが、
「連絡をとってほしい人」を聞いておけたら助かるかもしれませんね。
そのほかにも
・年賀状のやりとり
・携帯のアドレス帳、履歴(スマホの場合はロック解除が必要なので注意)
・贈答控え
などが役にたつかもしれません。

総務省がまとめた「令和2年通信利用動向調査」より、携帯電話やスマートフォンといったモバイル端末の保有率は、全年齢で83.0%、年代別では60歳代で87.9%、70歳代で73.1%と高くなっており、デジタル機器やデジタルデータが日常生活に浸透していることがわかります。
「デジタル遺品」への対応を、残す方も残される方も考えておく時代になりました。
パスワードなどをいざという時は共有できる関係になるといいですね。

「デジタル遺品」でトラブルにならないために
デジタル遺品とは、故人が所有していたデジタル端末の内部と、故人が利用していたインターネット上のサービスに生じ得るもの。
デジタル遺品の相談は、実に7割が「故人のスマートフォンが開けない」というものです。
逆にいえば、スマートフォンさえ開ければデジタル遺品の調査はそこまで難しくありません。利用している金融機関やサービスが特定できれば、重要度の高いものから順に問い合わせて対応していくことができます。

2021.11 7 国民生活より抜粋

https://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-202111_02.pdf

「いつまでもあると思うな親と金」(江戸時代の狂歌由来といいいます)ということわざがあります。
元気なうちなら聞けることも、相手が意志表示ができなくなってからでは希望を聞くことはできません。
元気なうちに、やってほしいこと・やってほしくないことを聞いておきましょう。

延命治療などはどうしたいか
家で過ごしたいか、設備のいい施設で過ごしたいか
大事に受け継いでほしいものは何か
親の希望を聞きとっていくと、自分の希望も明確になってきます。

親の財産も気になるところです。
死亡届を提出すると、
・戸籍への記載・住民票の抹消
・火葬・埋葬の許可
・税務署への通知
などがわれます。

よく、「死亡届を出すと銀行口座が凍結される」といいますが、
役所から通知があって自動的に凍結されるのではありません。
金融機関が故人の死を知った時点で凍結されます。
遺族が凍結の申請をしたり、金融機関の職員が新聞の訃報などをチェックしたりして、故人の死を知った時点で凍結されます。
そして、解除には相続手続きが必要になります。

財産に関することは、自動的には行われません。
保険金も預貯金も株式などの有価証券も請求しなければもらえません。
知らなければ請求もしないので、
「残そう」
と思っていたものが残したい相手に渡らないケースも出てきます。

どこの銀行に預金しているのか
どこの保険会社に加入しているのか
通帳・証券などはどこにあるのか
など、どこに財産があるのか、わかっていると残す方、残される方、双方にとって助かります。

財産がいくらになるのかは「いつ相続が行われるか」で変わります。
「いくら」ではなく「どこ」にあるのかが大事になります。

どんな手続きが必要になるのか、参考までに、三菱UFJ信託銀行の作成した
「相続時の手続き一覧」をのせておきます。
https://www.lifeplan.tr.mufg.jp/souzoku/DL_check.pdf

つらつらと、「相続が起こったら」必要になりそうなことを述べてきました。
どれも根本にあるのは、「親との対話」です。
面接やアンケートのように聞き取るものではありません。
親の人生がどんなものだったのか、語り合う中で見えてくるものもあるでしょう。

先ほどの狂歌には続きがあり、
「いつまでもあると思うな親と金 ないと思うな運と災難」というのだそうです。
いつどこで何が起こるかはわかりません。話ができるうちに、話をしておきましょう。
お盆、お彼岸、法事
ご先祖様にまつわる集まりなどで、話題にのるようになるといいですね。


この記事の執筆者:三島 佳予子(Kayoko Mishima)


保有資格:CFP・1級ファイナンシャル・プランニング技能士 / 住宅ローンアドバイザー /宅地建物取引士