老後2,000万円問題・介護1,500万円問題

老後2,000万円問題として「老後資金に2,000万円が必要」と騒がれたのは2019年夏、今から4年前のことです。
そして昨年、2023年8月から「介護1,500万円問題」が始まりました。

介護保険の改定が行われて、介護保険施設入所者・ショートステイ利用者の食費(日額)の負担限度額が、2023年8月から変わっています。(対象は住民税非課税世帯)

全文はURL記載のチラシをご覧ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/000334525.pdf

介護保険施設(介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院)やショートステイを利用する方の食費・居住費については、低所得の方への助成(補足給付)を行っています。
※補足給付は、世帯全員(別世帯の配偶者を含みます)が市町村民税非課税の場合が対象です。

令和3年8月から、在宅で暮らす方との食費・居住費に係る公平性や負担能力に応じた負担を図る観点から、一定額以上の収入や預貯金等をお持ちの方には、食費の負担額の見直しを行います。

厚生労働省 補足給付変更のお知らせチラシ より

この表は年金収入と利用料の関係になっています。
介護保険は複雑です。
老後、労働収入がなくなり年金収入等だけになり、収入が少ない人には補足給付という制度があります。

この補足給付が、令和3年8月から変更になっています。

年金収入等は少ないが、一定額の預貯金がある人には相応の負担をしてもらおう、という制度は平成27年8月から始まりました。
介護保険創設時の平成12年には所得に関わらず利用料を1割負担としていましたが、次のような改定が行われ、その内容が令和3年8月から変更になっています。
① 高所得者の自己負担額は2割負担、3割負担の導入
② 所得は少ないが金融資産が多い高齢者への補足給付の見直し。

平成27年8月からの介護保険に関する資料(厚生労働書PDF)
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12301000-Roukenkyoku-Soumuka/0000052314.pdf

給付と負担について(参考資料2 令和5年7月10日厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001119101.pdf

この記事を読まれている現役世代の方には、自身が介護保険を使う年代になることなどまだまだ先のことで想像できないかもしれません。
けれど、何事もなければみんな年をとり、いつかは老後はやってきます。
大半の人は何事もなく現役時代を終え、老後生活を体験します。

老後はいきなりはやってきません。
ゆっくりと準備をする期間があります。
「老後資金に2,000万円必要だから貯めなさい」
「老後資金を1,500万円持っている人は年金は少なくても介護保険の利用料はしっかり払ってね」

現役時代に老後の少ない年金に備えて一生懸命貯めた人への矛盾したようなメッセージかもしれません。
けれど、これが現実です。

対応策はあります。
例えば、
・補足給付が関係ないほどに年金をたくさん受け取れるよう、がんばって働く。
・年金を補う収入源を持つ
(・仕事を長く続ける)
(・家賃、配当金、個人年金など労働収入以外の収入を得る)
・金融資産の一部を預貯金に含まれないものに変える

現行制度では預貯金に含まれるのは次の通りです。

生命保険などは預貯金に含まれないので、貯蓄性がある生命保険を金融資産の一部に組み入れることも対策の一部になります。

「老後はまだまだ先」
かもしれませんが、「老後対策は早ければ早いほど選択肢が多い」

「貯蓄から投資へ」などやたらと投資が推奨されますが、
「投資は老後対策」と言い切る人もいます。
先のことを早く始めると楽になります。
皆さまが先のことを考える助けになる情報発信をこれからも心がけます。

〈参考〉

厚生労働省 介護保険の解説 サービスにかかる利用料
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/fee.html

サービス付き高齢者向け住宅等 の月額利用料金
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12401000-Hokenkyoku-Soumuka/0000102200.pdf

特定施設入居者生活介護(社保審-介護給付費分科会 第179回(R2.7.8)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000648154.pdf

厚生労働省 補足給付変更のお知らせチラシ
https://www.mhlw.go.jp/content/000334525.pdf


この記事の執筆者:三島 佳予子(Kayoko Mishima)


保有資格:CFP・1級ファイナンシャル・プランニング技能士 / 住宅ローンアドバイザー /宅地建物取引士